飲料水 ~浄水器だけには頼れません~

有害物質が含まれる水道

腐食した水道管私たちが飲んでいる水道の水は、最近、非常にまずいものになってしまった。

まずいだけならまだいいが、安全性も低下している。
水源がきれいだったころは、添加された塩素と水道管から溶出してくる有毒物質だけに気をつけていればよかった。
ところが、環境汚染が進んで水源が汚れ、それ以外の毒物が水道水に入るようになった。

水道水の中に含まれている毒物をひととおりみてみよう。
ゴルフ場や水田・畑で使用されているさまざまな農薬、松枯れ防止と称して松林や山林に使用される殺虫剤、河川敷に用いられる除草剤などが、川や地下水を汚染し、それを水源とする水道水も汚染している。
合成洗剤や家庭の調理ゴミ、化学肥料や畜産から発生するふん尿も、河川や湖沼を汚す。

それが水道水に入り、殺菌のために添加された塩素と化合してトリハロメタンが生成する。
トリハロメタンは水道管の中でも発生するから、浄水場では基準値以下でも、家庭で飲むときには基準をオーバーしていることもある。
トリハロメタンのひとつで発ガン性のあるクロロホルムが、
WHOのガイドライン値の 0・03ppm 含まれている水を飲んでいると、計算上は毎年 20 人の日本人にガンが発生する。
また、トリハロメタン以外の有機化合物も生成するが、こちらは正体不明なものが多く、危険性も対策もわかっていない。

水源の水、が汚れるにしたがって、浄水場で添加される塩素の量が多くなってきている。
外国では上限を決めて添加するのがふつうだが、日本は水道の蛇口で O・1ppm「以上」となっているので歯止めがない。
塩素の添加量はどんどん増えている。
また、河川や湖沼の汚れがひどくなって富栄養化すると、そこにカビが発生し、水道水からカピ臭が漂うようになる。

水道管の素材に、かつては石綿(アスベスト)が用いられていた。
いまでも鉛管は用いられているし、水道管の内面塗料としてコールタールやアスファルトエナメルもまだ用いられている。
石綿、コールタール、アスファルトエナメルは発ガン物質である。
鉛も有毒物質である。
水道管は水で削られてだんだん薄くなるから、これらの発ガン物質が水道水の中に入っていることは問違いない。

欠陥だらけの浄水器

環境をきれいにして、水源の汚染をなくすことが水道水を安全にすることの基本だが、間題の解決がいつになるかは見当がつかない。
そこで、自衛することが必要になる。
自衛する必要があるのは、塩素臭やカビ臭を感じた場合と、水道水源の上や近くにゴルフ場ができて農薬汚染が心配される場合である。
水がまずいと感じたときには、有害物質が含まれていると考えたほうがいいし、農薬が多量に使われていれば、味に変化はなくても対策を立てたほうがいい。

自衛の方法は、浄水器とミネラルウォーターをうまく使用することである。
いずれにも欠点があるが、みんなが井戸を掘るわけにはいかないから、水道水のリスクとのバランスを考えながら、あなた自身でいい方法を模索するしかない。
残念ながら、市販されている浄水器の大部分は、あまり頼りにならない。
有害物質をほとんど除去しない詐欺同然の浄水器が大手メーカーからも堂々と販売されていたりするのだ。

雑菌が出たのは、活性炭が吸着した有機物がエサになって増殖したからである。
したがって、他の浄水器でも雑菌は増殖しているわけだ。浄水器を使うならぼ、1日の最初に 1~2分、捨て水をしよう。
最近開発された「中空糸膜」というマイクロフィルターは雑菌を通さないが、フィルターの外に繁殖した雑菌には対策がない。
結局、捨て水以外に対策はないのだ。

⑤石綿・赤水
マイクロフィルターの中空糸膜は、石綿や赤水対策に効果がある。
これらへの対策だけならば、多くの浄水器が有効である。
ただし、中空糸膜にも欠点はある。
プラスチックで作られているので、表面積が広いだけ、初期のうちは他のフィルターより多くの化学物質が溶出する可能性があるのだ。
溶出物質への対策としても1~2 分問、水を流してから使用するほうがいい。

⑥塩素
塩素に対してだけは、ぽとんどの浄水器でかなり効果がある。
1800 円の「○○コの水」でも平均除去率は 89%で、メーカーが指示した期問ならぼまずは有効である。
もっとも、「アクアドクターAD-20」や「活水器ウォッティ HV-87」のセラミック式だけは、塩素に対してもすぐに効果が減少する。
水道水を半日も置いておけば塩素はほとんど飛んでしまうから、塩素への対策だけなら、浄水器をわざわざ購入しなくてもいい。

⑦カピ臭
カビ臭はモデル実験しかできない。
『暮らしの手帖』のテストでは、「エクセレント MF-10」が No1、性能がもっとも悪いのは、ホース取付け型では「トレピーノ SW-2」 、蛇口直結型では「みず自漫 TK-66」だった。
国民生活センターのテストでは、「トレピーノ・スーパーミニ」が No1、性能がもっとも悪いのば「アクアドクター」だが、「みず自慢 TK69」も有効なはずの時点でまったくカビ臭を取れなくなる。

水との現実的なつきあい方

もし、あなたが浄水器をすでに買ってしまっていたら、その浄水器のあまりの性能の低さに腹を立てるだろう。
しかし、それが現実である。
この現実のなかで、私たちは水とどのようにつきあっていけばいいのかを考えねばならない。
家庭で使用するすべての水を浄水器で処理することはできない。
したがって、風呂や、食器洗いなどの飲まない水は、塩素臭もカビ臭もあきらめる。

あきらめが肝心である。
あきらめないとストレスがたまって健康によくない。
調理用に用いる水は塩素のないほうが好ましい。
塩素はピタミンを破壊するし、食品の味も悪くする。
条件によって異なるが、キャベツの千切りを水道水につけておくと数割はビタミンが減少する。

したがって調理用水には、浄水器も出番はある。
塩素さえ取ってくれればそれなりに利用価値はあるのだ。
問題は飲み水である。
生水を飲もうと思うなら、不便でもまとめて汲みおいて冷蔵庫にいれておいたほうがいい。
それ以外のテストされた日本の浄水器は、すべて失格である。

単身者や少人数で、家で水をあまり飲まない家庭では、ミネラルウォーターを用いるのもひとつの手である。
このほうが浄水器よりはるかに安上がりになる。
名水ブームは水がまずい証拠だが、どこにでも水を売っている時代になった。
源水はかなりきれいなものを使っているし、塩素を使用していないから、有害物質の生成もない。

問題は、プラスチック容器からの溶出物とゴミが増えることである。
しかし浄水器でも、プラスチックフィルターを用いているし、カートリッジ交換という問題がある。
水を買って飲むとゴミは増えるが、この際、安全には代えられないと多少は目をつぶるしかないと思われる。

水道水がとくに汚れてしまったのは、東京・千葉・横浜と、大阪・京都である。
これ以外の地域では、そのまま飲んでも心配ないところが多い。
マンションやビルなどで赤い水が出る場合は、色が消えるまで流してから味を判断する。
味のいい水が出てくれば、鉄分だけだから心配することはない。

〈参考文献〉▼市民のシンプルライフセミナー『水・こうして飲めば心配ない』農山漁村文化協会、1990年
▼東京・生活者ネットワーク、東京の水を考える会共著『どうなっているの?東京の水』北斗出版、1990年
▼小若順一『日本子孫基金・通信10号水道鋼管に用いられる窮極の発ガン物質』日本子孫基金、1987年
抜粋:小若順一・松原雄一編著 くらしの安全白書 学陽書房

●プラスチックはすべて疑ったほうがよい

そのほかにもプラスチック添加剤で、内分泌撹乱物質作用があるものとしてリストアップされているものに、アジピン酸エステル類があります。
脂肪酸エステルともいうこの添加剤は、塩ビや合成ゴムなどによく用いられる耐寒性可塑剤です。

このアジペート類の代表格が、アジピン酸ジオクチル(DOA)で、塩ビ、スチロール、ニトロセルロースなどに添加されてますが、とくに塩ビで耐寒性可塑剤として利用されています。
耐光性・耐熱性にもすぐれていることから、寒いところで用いるレザー、フィルム、シートなどによく使われています。

アジピン酸ジイソデシル(DINA)もまた、塩ビによく用いられていますが、フタル酸エステルと併用されるケースが多くなっています。
アジピン酸ジアルキル610(D610A)は、食品包装用の塩ビフィルム、耐寒性のレザー、フィルムなどに用いられています。

ほとんどの水道配管に使用されている塩ビ。有害添加物の宝庫であるということを認識していただく必要がある。

そのほかにも内分泌撹乱物質としてリストアップされている添加剤には、難燃剤としてよく用いられるポリ臭化ビフェニール類(PBBs)、紫外線防止剤としてよく用いられるベンゾフェノン、安定剤や着色料などに用いられる水銀や鉛、カドミウムといった重金属化合物があります。
プラスチックは、基本的に、添加剤を加えることで製品として成り立っています。
添加剤を使っていないものは、ほんのわずかです。すべてを疑ってかかったほうがよいと思います。

抜粋:『ダイオキシンと環境ホルモン』(天笠啓祐著 日本消費者連盟発行)

安全性の高いプラスチック?

安全性の高いプラスチック?森下家のプラスチック容器をメーカーにて取り寄せた溶出試験データです。
おかず容器:ポリプロピレン
水及び4%酢酸 60℃ 30分
検査実施:財団法人日用品金属製品検査センター

●表の内容通りのような結果です。重金属の数字か無いのがさらに気になります。

※ アイボリー色の各容器、安全性が高いPP(ポリプロピレン、ちなみに1番がPE:ポリエチレン、2番がPP、3番がPET:ポリエステル/ペット、シリコンの順に安全と言われている)でも着色の顔料やプラスチック添加物が複数使われ、安全とは程遠いものになっているのです。
しかも、試験条件が水及び4%酢酸を 60℃ 30 分・・・では普段の使い方の方がよほど有害物質が溶出しやすいことになっているのです。
というのは、塩分で5倍、酢酸が混じると濃度が 20 倍になると環境ホルモンの書物には記載がありましたが、酢酸だけで 60℃の加熱はあまりにも温い。
沸騰しているものを注いだ 100℃を早朝5時のお弁当作りから昼13時までの8時間くらいが理想です。

安全性の高いプラスチック?30分で鉛が28.5ppmとなっていますが、トマトスープのような酢酸+塩分を入れたらこの数値が何十倍になるか想像しただけで恐ろしいです。
しかも鉛以外の他の項目も突破しそうな想像がつきます。

水道水の鉛汚染 有田 一彦(水問題研究家)

鉛の水道水汚染は深刻です。
現在、水道水中の鉛濃度は水質基準ギリギリか、あるいは基準値を越えるような状況となっています。
鉛の水道管、水栓・蛇口や管継ぎ手、それに塩ビ管からも鉛が溶け出してくるため、水道管路の至る所に鉛汚染の原因が埋め込まれているといえます。

*鉛の危険性

鉛はあまりに日常的な物質であるため、その危険性を軽視したり無視してしまいがちです。
しかし、鉛は神経系への毒物であり、発ガン性(IARC の 2B)もあります。
とくに、妊婦や幼児に対しては、カルシウムの代謝阻害を起こし発育障害にも繋がることもわかっています。

一方、鉛は鉛蓄電池、ハンダ、塗料、合金製造、それにガソリンのアンチノック剤や潤滑剤として広く使われてきました。
その有用性も有害性が問題になるにつれ、多くの用途での使用は減少しています。
でも、水道関連は例外で、飲み水から鉛を摂取する危険性が相対的に高くなってきているのです。

日本の水道法における鉛の飲料水質基準は、0.05mg/l(1992年 12月の基準改訂前は 0.1mg/l)。
WHO の 0.01MG/L や米国の 0.01mg/l(目標はゼロ)に比べると、約 3~5 倍緩いものとなっています。
基準改訂当時、日本には鉛の水道管などがたくさん残っていたため、もし WHO等の国際基準を採用してしまうと、日本各地で水質基準違反となり、水道事業体の責任問題に発展しかねません。
裏で何があったか知りませんが、 厚生省は国際的に恥ずかしくなるような基準値しか設定できませんでした。

しかし、厚生省もこれではまずいと考えたのか、「長期目標値を 0.01mg/l と設定し、おおむね 10 年間に鉛管の敷設替えを行い、鉛濃度の段階的な低減化を図る」と付帯文をつけました。
つまり、業界や水道事業体に 10 年の執行猶予を与えるから、その間に鉛対策をしてくれとシグナルを送ったわけです。
消費者不在の行政と業界擁護の構造がここにもありました。

*鉛管対策は進んできたが・・・

「10 年の執行猶予」を与えられた全国各地の水道事業体は、以前にも増して鉛管の取替交換を実行してきました。
1996年現在で、送配水系で残っている鉛管は約 46km ですが、静岡、群馬、神奈川、富山、福井、大分などの対応が遅れており、対策進捗状況の地域差がうかがえます。
鉛管は水道の送・配水管(本管)だけではありません。
ほんの少し前までは各戸への引き込み管用にも鉛管が施工されていました。

ところが、この部分は各戸住人の資産であり、水道事業体の管轄部分ではないため、交換の対象にもなっていません。
消費者にこの事実を伝えていない水道事業体がほとんどです。
居住者が勝手に鉛管を選んだわけではありません。
水道当局の「指導」の下で水道工事業者が施工したのですから、引き込み鉛管の放置は当局の無責任というものです。
危険情報を開示するとともに、交換費用の行政側一部負担まで含めて検討すべき課題ではないでしょうか。

加えて、蛇口までの配管経路には鉛管以外に鉛製品がたくさんあります。
たとえば、水栓(蛇口)や管の継ぎ手は鉛入りの銅鋳物や銅合金製品がほとんどです。
この 4 月から、TOTO が鉛溶出対策を施した水栓金具等を販売するとのことですが、既に使用されている鉛入りの蛇口は交換するしか手はありませんし、バルヴや継ぎ手等については、まだまだこれからの話。
水道本管の鉛管を排除しても、鉛の危険性は未だ残されたままなのです。

*塩ビからも鉛!

さらに厄介なことに、塩ビの水道管からも鉛が溶出します。なぜか。
塩ビの添加剤には安定剤と改質剤(可塑剤や難燃剤等)がありますが、鉛化合物は安定剤として、あるいは加工性をあげる改質剤(滑剤)として入れられていました。
配合は各社各製品で異なりますが、重量比で 3~5%程度。
これでは水道水への鉛溶出は不可避です。

当然ながら、先に述べた「10 年の執行猶予」は塩ビ業界にとっても深刻な問題になったため、93 年頃から鉛の替わりとして有機スズ等を使用した製品を出荷し始め、最近では鉛入りの塩ビ水道管はほとんどないようです。
さきほど「入れられていました」と過去形で書いたのは、そういう理由です。

しかし、90 年代中頃までに生産し施工された塩ビ配管はほとんど鉛入り。
塩ビ工業界からすれば、秘密にしていたわけではないと抗弁するかもしれません。
しかし、鉛入り塩ビついて水道事業体や消費者はどれほど知っていたでしょうか。
1992 年以降も自治体は鉛入り塩ビ水道管を使い、個人住宅・集合住宅の給水管の多くも鉛入り塩ビ管での工事でした。

もし塩ビ水道管が鉛入りである事実を知っていれば、鉛の入らないポリエチレン管等に変更したいという自治体や消費者もいたはずです。
しかし、国や関連業界にとって大切だったのは自分らの利益・都合そして責任回避の方策であり、消費者の健康や安全ではなかったのでしょう。

消費者はどうすればよいのでしょうか。
簡単な対処としては、蛇口開栓後に十分な捨て水を行い、鉛濃度を減らすことが肝心です。
朝一番の水や留守が続いた後の水には特段の注意を払って下さい。
しかし、現在の鉛入り水道管の危険性を消費者が理解しない限り、その対処をしようという動機付けにもなりません。
国・厚生省や水道事業体は、まず鉛入り水道水の実態と危険性を消費者に公開すべきです。

【毒】化学物質という毒まみれの現代生活を元気で生き抜く道

BIE(植物ミネラルマグマ)研究家 中山栄基

塩ビの水道管にも鉛が使われている
私が毒性の世界に入った昭和 42年は鉛中毒がかなり騒がれており、印刷の活字がまだ鉛で作られていました。
又、水道管も鉛管・鉛盤共同組合なる組織があり、水道管が酸性になると鉛の溶け出す量が多くなると騒がれていたものでした。

その後、塩化ビニール管になり、水道水に鉛が流出する可能性はなくなったとされています。
少なくとも大多数の方は今もそう思われたいるでしょう。
しかし、塩ビ管でも鉛が使われているのです。

鉛ビ樹脂の安定剤にステアリン酸鉛という有機鉛が使われており、塩ビ管や、このステアリン酸鉛の製造工場などの調査に私はよく行かされていたものです。
この塩ビ管からどれだけの鉛が溶出するかは定かではありませんが、樹脂に鉛が使われているということは一般的に知らされていません。

鉛は顔料としても使われており、樹脂の色付けにも使用されてました。
同様にカドミウムも黄色の顔料としても使われ、ビール瓶のプラスチックパッケージのあの鮮やか黄色はカドミウムの色でした。

こうしたプラスチックの製造工場では、タンブラーの中に樹脂を入れ、カドミウム顔料をペレットにまぶすなどの作業がおこなわれており、カドミウムの飛散がひどく工場が真っ黄色になっていたのを思い出します。
だからといって、私は過去の思い出にひたっているわけではありません。

毒の世界では今も昔に比べてよくなっているかといえばそうではないのです。
むしろ DDTとか有機水銀やベンゼンなどの強い毒性物質が影を潜め、代わりに極めて微量で長い期間の摂取による、慢性障害が主流になっているので、化学物質は深く静かに潜行して、人目につかず、目立たずに体が少しずつ蝕まれていくタイプの毒物が横行しているので、一見毒は解決を見たかのようですが、その逆でひどくなったといわざるを得ません。