化学物質過敏症は、微量の環境問題といえます。
CS(化学物質過敏症)chemical sensibilityからchemical intorerance(CI)と呼び名を変える動きがありますのでここでは、CIと呼ぶことにします。

化学物質過敏症は、発症のメカニズムが充分に解明されておらず、疾患の存在自体について、医学界での意見が分かれています。
住環境中に存在している、様々な種類の微量化学物質に反応し、発症するCI。これは極めて深刻な疾患であり、重症になると、通常の生活すら営めなくなり、例え病院でCIであると判明したとしても、それに対処できることは限られてしまっているのが現状で、普通の方は、家に帰っても毒ガスでも吸っているかのように苦しんでいるのが現状です。

CIの研究の歴史は浅く、世界中で開発された化学物質の登録数は2000年末時点で約2,800万種類。
このうち、日本で商業的に用いられているものは数万種類あり、年々増加しています(2001年版『環境白書』)。
それぞれの化学物質の安全性が厳密に検証されてから使用されているわけではありませんし、2種類以上が複合した場合の安全性については、ほとんど分かっていません。
したがって現状危険性が判明している科学物質に対して研究が進められているのが現状です。

比較的研究が進んでいるアメリカでは、10人に一人がCI患者だとも言われています。
さらに日本では、CIに対する認知度は低く、「神経症」「更年期障害」という診断をされるケースが多いと見られています。
まずは、その症状について、身に覚えがないかご確認ください。

CIの症状

初期症状としては、アレルギー系への症状が出ます。

  • 目がかすむ/まぶしい/暗く感じる/ちかちかする/ごろごろする/疲れる、視力低下、めまい、涙が出やすい
  • 鼻が詰まる/乾く、鼻水、鼻血、鼻の奥が重い、金属のにおいがする、くしゃみ
  • 耳が痛い/かゆい、耳鳴り、耳が聞こえにくい、中耳炎(音波への過敏)
  • のどが痛い/詰まる、口やのどが乾く、口の中がただれる、食べ物の味が分かりにくい、ものを飲み込みにくい、声がかすれる せき
  • おなかが張る/圧迫感がある/痛い/けいれんする、下痢や便秘、吐き気、胸焼け、げっぷ・おならがよく出る、胃酸の分泌過多、小腸炎、大腸炎 食欲低下
  • トイレが近くなる、尿がうまく出ない、尿意を感じにくくなる、夜尿症、膀胱炎、インポテンツ、性的な衝動の低下・過剰
  • 有害電磁波への反応

次に神経系(中枢神経)への影響が出ます。

  • のぼせ、顔がほてる、汗が異常に多くなる、手足の冷え
  • 生理不順、生理が始まる前にいらいらしたり頭痛やむくみがある、おりものが増える、陰部のかゆみ・痛み、不妊症
  • 呼吸がしにくい、呼吸が短くなったり呼吸回数が多くなる
  • 不整脈、血圧が変動しやすい、卒倒
  • アレルギー悪化 湿疹・じんましん・赤い斑点・にきびのような吹き出物が出やすい
  • むくみ 筋肉痛、肩や首がこる、関節痛

これにその他の生活上のストレスや急激な化学物質の曝露により重度のCIになると

  • 脳機能障害 頭が痛くなる/重くなる、手足のふるえ、けいれん
  • 切れる 鬱、躁、不眠、気分が動揺したり不安になったり精神的に不安定になる いらだちやすく怒りっぽくなる
  • 記憶障害 記憶力・思考力の低下
  • 貧血、甲状腺機能障害

といった症状が出てきます。これらの症状にはすべて個人差があり、また男女差、年齢差があります。
何らかの化学物質を大量に体に取り込んだり、または、微量だけれども長期間にわたって取り込んだ結果、この病気になるとされています。
最近の研究では、遺伝子レベルでの解明が進んでいて、たとえばトルエンの微量被爆に弱い遺伝子というのが解明されてきているようですが、公表はされません。
また、30代半ばから40代の女性がCI発症の症例が多いということが北里大学ではいわれています。
これは、住環境汚染による被害をもっとも受けやすいの状況と重なる部分です。

原因・CI発症のトリガー

CS発生の因子:現状考えられているもの

  • 身体負荷量
  • 適応・マスキング(馴化)
  • 遺伝的生物的個人差
    1. 先天的解毒機能障害=有機リン系に多い・母性遺伝をする。
    2. 酸化的ストレス(悪玉酸素)
    3. Paraoxinaseという毒物を外に出す酵素が少ない。
  • 発病までの栄養状態=抗がん剤をやめたなど
  • 基礎疾患の有無
  • 年齢差・性差=女性は36から46歳が多い(これは女性が、新築して家庭にいる時期や家庭でのストレス等が多い時期であるためではないのか?)

CI発症のトリガー

CI発症のトリガーは現状では59%シックビル21%殺虫剤8%有機溶剤(北里大学症例)だそうです。
CIの「発症原因」の半数以上が、いわゆる「シックハウス」や「シックビル」、すなわち、室内空気汚染です。

新築やリフォームで使われる建材や家具(合板や塩ビ壁紙、防炎処理カーテン、トルエン・キシレンなどが含まれた塗料など)から揮発するホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)、農薬類(防虫剤、殺虫剤、シロアリ防除剤、畳の防虫シート、蚊取り線香、農薬を使用された食品など)、芳香剤(トイレ用パラジクロロベンゼンなど)、たばこ、香水、香料、整髪料、ドライクリーニングされた衣類、インク(本、新聞、マジックやサインペンなど)、合成洗剤、塩化ビニール、プラスチック、食品添加物、塩素(水道消毒用・PVCパイプなど)、有害電磁波(家電など)、カビ(すべて個人差あり)などが汚染物質です。

室内空気以外では、農薬散布やごみ焼却による戸外の大気汚染(最近では黄砂が運ぶダストによる影響が懸念されています)や、医薬品、職場での化学物質(美容室のパーマ液、病院の消毒液、他人の喫煙など)が発症の引き金になりやすいです。

CIの特異性

この病気の特徴の一つに、アレルギーなどと比べても、はるかに少ない量の化学物質に反応することがあります。
ホルムアルデヒドの室内空気濃度指針値は0.08ppmですが、それより低い濃度で反応する患者もいます。

花粉症は、車の排気ガスなどで汚染された環境の方が、患者が多いことが報告されています。
昨年まではまったく異常がなかったのに、ある年を境に突然発症する花粉症。
化学物質過敏症も同じように、あなたが突然、患者になるかもしれないのです。

マスキング(馴化):治療

クリーンルームに入ると初期悪化が起こる(体内血液内の有害化学物質のサーキュレーション)=毒物が廻る。
チャレンジ=微量暴露(負荷はホルムアルデヒド・トルエン・ニコチン・カーバメート)脳の酸化ヘモグロビン値により判定対策 換気が第一 散歩20分 サウナ・お風呂

軽度の方は「これでそんなに悪化する前に直りますよ。」と先生もおっしゃっていましたが、患者は化学物質が出来るだけ少ない環境への転地療養を切望しています。
化学物質が少ない環境では、患者は見違えるほど元気になります。
また、この疾患一般に効く“特効薬”はなく、転地療養が回復への近道とされています。

しかし、現実には、転地療養先を探すことはたいへん困難です。
近年の住宅のほとんどは、化学物質を揮発させる新建材が使用されています。
運良く古い家を見つけても、前の住人が使用していた防虫剤が染みこんでいたり、長い間閉め切られていた場合はカビなどの問題があります。
また、家の周辺環境も問題です。
近隣でのごみ焼き、庭での農薬使用、新築やリフォーム、合成洗剤使用などは、常に患者の脅威です。
患者の中には、少しでも良い環境を求めて何度も引っ越しを繰り返し、お金をほとんど使い果たしてしまった方々もいます。

本当の危険性

子どもたちの身体への危険がもっとも注目すべき点です。
子どもへの影響は大人の3倍といわれています。
また、思春期での影響は神経系への症状が悪化することが近年判明(2002年)し、挙動異常や脳の自己異常・強迫神経症・学習機能障害・不眠・他の影響が出ます。

シックスクールなども真剣に検討すべき問題であり、また、それを理解することのできる社会・なくしてゆこうという社会がきわめて重要です。
子どもにとって安全であるべき学校の環境が原因で、子どもや教員が化学物質過敏症などを発症したり、または、すでに化学物質過敏症やアトピー、アレルギーになっている子どもや教員の症状が悪化するケースです。